「毎年、利益が出ないように調整しているんですよ。税金がもったいないから」
経営者の方から、こういう話をよく聞きます。でも、その考え方こそが、会社の成長を止めているかもしれません。
財務の見方には、大きく分けて「PL脳」と「BS脳」の2つがあります。どちらの視点で経営しているかで、5年後・10年後の会社の体力はまったく変わってきます。この記事では、その違いと、経営者が身につけるべき視点をお伝えします。
PL脳とは——目先の利益を追う見方
PL脳とは、損益計算書(PL)の視点で経営を考える思考です。
- 今期の売上や利益といった「目先の数字」に注目する
- 「いくら稼いだか」を重視する、売上重視型の発想
- 多くの経営者が自然と持っている、一般的な考え方
PL脳が悪いわけではありません。利益は会社の血液ですから、当然大切です。問題は、PLしか見ていないときに起こります。「今期黒字ならOK」という判断ばかりだと、将来への投資を後回しにし、節税のために利益をゼロに近づけ、気づけば会社に何も積み上がっていない——という状態に陥りがちです。
BS脳とは——資産を積み上げる見方
BS脳とは、貸借対照表(BS)の視点で経営を考える思考です。
- 「いくら稼いだか」より「何が積み上がったか」を見る
- 長期的な目線で、価値ある資産を形成していく
- 一時的な赤字を恐れず、将来の成長のために投資する
BS脳の経営者は、利益が出たら、それを内部留保や設備、人材といった「資産」に変えていきます。目先の利益を多少削ってでも、会社の土台を厚くしていく。お金にお金を稼がせる、資産家に近い発想です。
このBSを年々厚くしていく考え方は、貸借対照表(BS)を積み上げる中小企業の財務戦略で具体的に解説しています。
PL脳とBS脳の違いを5つの軸で比較
| 視点 | PL脳 | BS脳 |
|---|---|---|
| 時間軸 | 今期・1年単位の短期 | 5年・10年先の長期 |
| 重視する数字 | 売上・利益 | 資産・純資産・企業価値 |
| 投資への姿勢 | コスト削減を優先し投資を躊躇 | 将来のために積極投資 |
| 企業価値の捉え方 | 今期の利益額 | 将来生み出すキャッシュの総額 |
| 判断基準 | 「今期、利益を出せるか」 | 「長期的に価値を高められるか」 |

「利益ゼロ」が会社を弱らせる理由
冒頭の「利益を出さないようにしている」という話。これはPL脳の典型です。
たしかに、利益を圧縮すれば税金は減ります。でも、利益を残さなければ純資産(自己資本)は増えません。自己資本が薄い会社は、いざというときに踏ん張れず、銀行からの評価も上がりません。節税で守ったつもりが、会社の地盤沈下を招いているのです。
このあたりのリスクは、利益ゼロ主義では会社は成長しない——運転資金を積む重要性でも詳しく解説しています。
まとめ
PL脳は「いくら稼いだか」、BS脳は「何を積み上げたか」を見る思考です。
- PL脳……今期の利益重視。目先は良くても、土台が積み上がらない
- BS脳……長期の資産形成重視。一時的な赤字を恐れず投資する
もちろん、利益(PL)も大切です。大事なのは、PLで稼いだものを、BSに積み上げていくという両方の視点を持つこと。「今期の利益どうだった?」だけでなく、「去年と比べて、会社に何が積み上がった?」を問いにする習慣が、強い会社をつくる第一歩です。


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