利益ゼロ主義では会社は成長しない——運転資金を積む重要性

会計・財務のしくみ

「利益を出すと税金がかかるから、毎年ゼロになるよう調整しているんです」

経営者の方から、こういう話をよく聞きます。気持ちはわかります。せっかく稼いだお金を税金で持っていかれるのは、もったいなく感じますよね。

でも、この「利益ゼロ主義」は、一時的に税金を避けられるだけで、長い目で見ると会社の成長を大きく妨げる危険な発想です。この記事では、その理由と、代わりに意識すべき「運転資金を積む」考え方をお伝えします。

利益ゼロ主義の5つの危険性

毎年利益をゼロにしていると、次のようなリスクが積み重なっていきます。

  • 成長資金の不足……利益がなければ、新規事業や設備投資の資金を確保できず、成長が鈍化します。
  • 金融機関からの信用低下……銀行は融資判断で利益を重視します。利益を出していない会社は、資金調達が難しくなります。
  • 予期せぬリスクに対応できない……内部留保がないと、景気変動や業績悪化のときにキャッシュ不足で黒字倒産も起こり得ます。コロナのような事態が、今後ないとは限りません。
  • 従業員の待遇を改善できない……給与や福利厚生を上げる原資がなく、優秀な人材の流出を招きます。
  • 競争力の低下……販促や研究開発に投資できず、競合に遅れをとります。

特に、運転資金の準備が足りないと、いざという時に銀行が貸してくれなかったり、細かな経営リスクに対応できなくなったりします。利益が出ていてもキャッシュが尽きる「黒字倒産」を防ぐために月次で見るべき数字は、キャッシュが尽きる前に気づく——月次で見るべき数字3つで解説しています。

「節税」と「内部留保」はトレードオフ

そもそも、なぜ利益を残すことが大事なのでしょうか。

利益を圧縮すれば、たしかに税金は減ります。でも、税引後の利益は、そのまま会社の純資産(自己資本)として積み上がっていくものです。利益をゼロにするということは、会社に積み上がるはずだった体力を、自分から削っているということでもあります。

この「毎年の利益が会社に積み上がっていく」仕組みは、貸借対照表(BS)を積み上げる中小企業の財務戦略で詳しく解説しています。目先の利益(PL)だけを見るか、積み上がる資産(BS)まで見るか——その違いは、BS脳とPL脳の違い——経営者が身につけるべき財務の見方もあわせてどうぞ。

運転資金の重要性

運転資金とは、毎月の人件費・家賃・光熱費など、売上が入金されるまでの間も経営を回すために必要なお金です。安定経営のためにも、もしものときの保険としても、しっかり確保しておくことが重要です。

中小企業の運転資金は、月間の固定費+変動費の一定割合 × 必要月数で算出します。

例:固定費100万円+変動費の30%=130万円 × 3か月=390万円

最低でも、これくらいは手元に持っておきたいという目安です。この固定費と変動費の分け方は、固定費と変動費の分け方——損益分岐点を自分で計算するで詳しく解説しています。

運転資金を確保する3つの方法

  1. 利益の一部を先に貯める……貯蓄用の口座を分けて、「毎年〇%は必ず移す」というルールを決めておきましょう。
  2. 支出を仕組みで管理する……意識的にコストを下げ、貯蓄の優先順位を上げます。
  3. 銀行との関係を育てる……毎年の決算をきちんと黒字にしておくことが、金融機関の信頼につながります。

まとめ

利益ゼロ主義は、短期的には賢く見えても、長期的には会社の成長と安定を蝕みます。

  • 利益を残さないと、成長資金も、銀行の信用も、もしもの備えも積み上がらない
  • 節税と内部留保はトレードオフ。削りすぎは会社の体力を奪う
  • 固定費+変動費 × 必要月数を目安に、運転資金を確保する

大切なのは、税金を払ってでも利益を残し、それを会社の土台に積み上げていくこと。資金の流れを日々把握するには、freee会計マネーフォワードクラウド のようなクラウド会計ツールが役立ちます。銀行口座と自動連携し、運転資金の状況をリアルタイムで確認できます。


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