── 経営チームに必要な思考の高さと広さ ──
会社を前に進めるには、日々の判断と行動が欠かせません。
しかしその“判断”は、どこから・どこまで・何を見ているかによって、まったく違ったものになります。
とくに、現場と経営をつなぐ「No.2」のようなポジションにとって重要なのが、視座・視野・視点の違いを理解すること。
この記事では、「山登り」と「デジタルイラストのレイヤー」という2つの比喩を使って、この3つの概念をわかりやすく解説します。
山登りで考える:視点・視野・視座とは?
登山にたとえると、次のように置き換えられます。
視点=足元を見ている
いま、目の前の課題に集中している状態です。
たとえば、「このクレームにどう対応するか」「明日の納品に間に合うか」といった“即時の行動”がここにあたります。
視野=周囲の風景がどこまで見えているか
たとえば、隣の登山者の様子、後ろに続くチーム、天候の変化、体力の残量など。
自分の位置から、どのくらい周囲を把握しているかが視野です。
視座=どの高さに立っているか(何合目にいるか)
これは、そもそも「どの立場・責任の高さから山を見ているか」という話です。
現場リーダーは5合目、部門長は7合目、社長は山頂。
立つ高さが変われば、同じ山でも見える景色はまったく変わります。
たとえば、3合目では森の中しか見えませんが、山頂からなら「全体の地形」や「天候の流れ」まで見通せるようになる。
これが視座の力です。
レイヤーで考える:視点・視野・視座とは?
もうひとつの例が、デジタルイラストのレイヤー構造です。
イラストを描いたことがない人でも、PowerPointや画像編集アプリの「重ね順」はイメージしやすいと思います。
視点=今、どのレイヤーを触っているか
たとえば「背景」なのか、「人物」なのか、「装飾」なのか。
これは「いま自分が注目しているテーマは何か」という話です。
「今月の採用」「売上管理」「労務トラブル」などが該当します。
視野=全体のレイヤー構成を見渡せているか
各要素が、どのように重なり合い、影響を及ぼしているか。
「採用→育成→評価→定着」のように、ひとつのレイヤーが他の層にどう影響しているかを意識できる状態です。
視座=この絵全体が、どんな世界観(ビジョン)を描こうとしているか
単にレイヤーを操作するだけではなく、「どんな完成形を目指しているのか?」という上位の意識。
これが視座にあたります。
会社でいえば、「この組織で何を成し遂げたいのか」「なぜ存在するのか」という理念やビジョンに該当します。
視座が変われば、見える世界も話す言葉も変わる
ここで注意すべきは、視座が異なる者同士では、同じ景色を見ていても話がかみ合わないということです。
社長が話す「3年後の市場変化」や「社会的価値の創造」は、現場から見れば“ピンとこない”話に感じられることもあります。
逆に、現場が悩む「パートさんの人間関係」や「勤怠ミス」の話は、社長から見ると“枝葉”に見えることもあります。
ここで大事なのが、No.2の翻訳力です。
視座を上げつつ、現場の視点も理解し、視野の広さで両者をつなぐ。
この“橋渡し”ができる存在が、組織を前に進めます。
No.2に必要なのは「3つの目」
現場と経営の間に立つ立場として、No.2が持つべきは次の3つの目。
種類 | 内容 | 例 |
---|---|---|
視点 | 目の前の課題を捉える目 | 今日の問題・現場の声 |
視野 | 全体のつながりを把握する目 | 部門間の関係性・リスクの波及 |
視座 | 高いところから意味を考える目 | ビジョン・中長期計画・戦略 |
ポイント:視座を上げることで、視野が広がり、視点が鋭くなる。
これはまさに、組織づくりの中核に立つNo.2の成長そのものです。
まとめ:今、自分は「どこから」「どこまで」「何を」見ているか?
-
視点は「何を見ているか(対象)」
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視野は「どこまで見えているか(範囲)」
-
視座は「どこから見ているか(立場・高さ)」
この3つを自在に行き来できるリーダーこそ、社長を支え、組織を導く存在になれます。
ぜひ、あなた自身の「立ち位置」をときどき問い直してみてください。
視座を1段上げることが、組織の未来を変える第一歩になるかもしれません。
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