はじめに:No.2とは何者か?
企業において、No.2とはどんな人でしょうか?
「右腕」「参謀」「実行責任者」――呼び名はさまざまですが、どれも共通しているのは
「社長のビジョンを、組織の現実に落とし込む存在」です。
しかし、No.2として組織を支えていると、社長との関係にモヤモヤを抱えることは少なくありません。
「言ってることがコロコロ変わる」「突拍子もないことを言い出す」「現場のことを何もわかってない」――そんな気持ちになることもあるでしょう。
けれど、それは“社長の能力の問題”というより、社長とあなたの“人格バランス”の違いかもしれません。
その視点を与えてくれるのが、E-Myth(起業家の神話)で紹介されている「3つの人格」の考え方です。
E-Mythの「3つの人格」とは?
E-Mythとは、アメリカのマイケル・E・ガーバー氏が唱えた【起業家の神話】です。
以下の書籍に詳しく紹介されているので、ご興味のある方は是非読んでみてください。
E-Mythでは、事業を行う人の中には、以下の3つの人格があるとされています。
1. 起業家(Entrepreneur)
未来を描き、アイデアや可能性を追い求める夢想家。変化を歓迎し、常に「どうすればもっと良くなるか?」を考えます。
2. マネージャー(Manager)
秩序と安定を重んじる現実主義者。計画や手順、管理に長けており、日常の業務を回す仕組みづくりを担います。
3. 職人(Technician)
手を動かして、実務をこなす専門家。「今ここ」に集中し、品質や効率にこだわります。


社長は「起業家」が強くなりがち
多くの社長は、起業家気質が強い傾向にあります。
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「このアイデア、すごいと思わない?」
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「こういう世界をつくりたいんだよね」
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「半年後には、これをやってみたい」
その姿は、とても魅力的で情熱的。でも、現場とのギャップが生まれやすいのも事実です。
起業家は「0→1」の発想が得意ですが、それを「日々の業務」にどう落とし込むかは苦手なことが多いのです。
No.2が担うべき人格は「マネージャー」
ここで登場するのがNo.2のあなたです。
No.2がもっとも意識したいのは、「マネージャー」の人格です。
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社長のビジョンやアイデアを「構造化」し、
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現場メンバーが実行できるよう「仕組み化」し、
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必要に応じて「言語化」「見える化」してチームに伝える。
つまり、社長の未来志向(起業家)と、現場の実務(職人)をつなぐ「翻訳者」的な存在が、No.2としての最大の役割なのです。
落とし穴:職人になりすぎるNo.2
とはいえ、現場で動きながらNo.2を担っている人ほど、「職人」に偏りすぎる危険があります。
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手を動かすことが中心になり、視野が狭くなる
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「なぜこれをやっているのか?」を見失う
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社長の話を「机上の空論」として切り捨ててしまう
一方で、社長と張り合って起業家マインドを持ちすぎると、「船頭多くして船山に登る」状態になりかねません。
No.2に求められるのは、“全人格のバランス”を取りながらも、「マネージャー」としての視座を保つことなのです。
バランスのとれたNo.2になるためのヒント
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自分の人格比率を意識する
「自分は今、起業家・マネージャー・職人のどれが強く出ているか?」を振り返ってみましょう。 -
社長の人格バランスを観察する
社長が起業家タイプなら、あえてあなたはマネージャー・職人寄りに。逆に社長が職人タイプなら、あなたがビジョンを言語化する立場に回ることも。 -
翻訳・再設計力を磨く
社長のアイデアを、現場が実行できる計画に落とし込む練習を積みましょう。週次定例や、プロジェクト管理が訓練の場になります。 -
「対立」ではなく「編集」する
社長の発言をそのまま受け入れなくていい。でも、頭ごなしに否定せず、「そのアイデアの核は何か?」を探る姿勢が信頼を育みます。
おわりに:No.2という“翻訳者”の価値
E-Mythの3つの人格は、どれか一つが正解ではありません。
ただし、1人の人間がすべてを高いレベルでこなすのは難しい。だからこそ、社長とNo.2で役割分担が必要なのです。
社長が未来を描き、No.2が道を整え、職人たちが前に進む。
その「翻訳者」としての仕事こそ、No.2にしかできない価値ある仕事です。
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