「求人を出しても応募が来ないんですよね……」
最近、そんな相談をよく耳にします。
採用活動がうまくいかない。せっかく採用しても、すぐ辞めてしまう。
これらの背景には、採用に対するある「前提」のズレがあるのではないかと感じています。
それは、会社は“選ぶ側”であるという前提です。
求職者も「会社を選ぶ時代」
少し前までの採用活動は、「この条件で募集すれば人が来る」というものでした。
でも今は違います。人手不足が進む中で、優秀な人材ほど、“選ぶ側”になっているのが現実です。
特に若い世代は、給与や勤務時間だけでなく、
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自分の価値観と合うか
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働きがいを感じられるか
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成長できる環境か
といった「会社の中身」を重視しています。
これはまさに、企業が「見られている」「選ばれている」ということです。
「従業員はお客様」という考え方
私が以前勤めていた会社で、上司からこう言われたことがあります。
「従業員はお客様だと思って接しなさい」
「社員の幸せは顧客の幸せ}
最初は驚きました。従業員は部下であり、指導する対象だと思っていたからです。
でも、この言葉の本質はこうです。
お客様には、誠実に、丁寧に、価値を提供するよね。
それと同じように、従業員にも価値を提供できているか?
この視点に立つと、採用活動そのものが変わってきます。
“会社が選ばれる時代”を示す、3つの数字
「会社も選ばれる側だ」と言っても、まだ実感が湧かないかもしれません。
でも、数字で見るとその“過酷さ”がよくわかります。
① 美容室は 約26万軒。コンビニの約5倍。
街のあちこちにある美容室。実はその数、全国で約26万軒。
私たちが「多いな」と感じるコンビニ(約5.5万軒)の5倍近くあります。
つまり、求職者にとっては「選び放題」。
そしてお店側は「選ばれなければ生き残れない」という現実があります。
② 保険代理店は 約16万件。コンビニの約3倍。
個人経営や小さな代理店も含めると、保険代理店は全国で16万件以上。
こちらも、コンビニの約3倍。
「見えにくいけど競合が多い」典型的な業界です。
③ システム会社は 約3〜4万社。でも競争は激しい。
一見少なく見えるかもしれませんが、システム会社は3〜4万社。
しかし、社員数10名以下の会社が大半を占め、新陳代謝も激しい世界です。
そして、、、コンビニは、高校生から働けるいわゆるマックジョブです。
それに比べて、例に挙げた美容室、保険代理店、システム会社はどうでしょう?
入社にあたって、最低限の資格やスキルが必要ですよね?
つまり、それだけ求職者のパイも狭まるのです。
案件を獲得できるか、パートナーとして信頼されるか、
まさに「選ばれる会社」だけが生き残れる構造です。
数が多い=選ばれる時代
これらの数字が示しているのは、どの業界でも“選ばれる力”が問われているということです。
そして、それは「採用の場」でも同じ。
求職者にとって、会社は選ぶ対象。条件だけでなく、姿勢・文化・発信の内容まで見られています。
選ばれる会社の特徴
選ばれる会社には、共通する特徴があります。
それは、「ここで働きたい理由」がある会社です。
たとえば…
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経営者の価値観が言語化されている
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どんなビジョンに向かっているかが明確
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現場の人の声が発信されている(SNSやブログなど)
給与や福利厚生が平均的でも、「この会社で働く意味」が伝わってくる会社には、共感した人材が自然と集まってきます。
面接は“売り込みの場”
面接というと、つい「見極めの場」として捉えがちですが、これからは違います。
面接は、会社を“売り込む場”でもあるべきです。
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どんな人と一緒に働けるのか
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どんな挑戦ができるのか
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どんな価値観で経営しているのか
をしっかり伝えることで、応募者との信頼関係が築けます。
求職者も、ネットで会社を調べてから応募してきます。
「この会社、ちゃんと人を大事にしてるな」
そんな印象を持ってもらえるかどうかが、採用成功の鍵です。
「従業員=お客様」という意識が会社を変える
この視点は、採用だけでなく、社内文化にも大きく影響します。
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「どうしたら働きやすいか?」
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「どうしたら成長できるか?」
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「どんな仕組みがあれば喜ばれるか?」
と、まるでお客様向けにサービスを磨くように、社員向けの仕組みや制度を見直していける。
それが、離職率の低下や定着率の向上にもつながります。
まとめ:採用は、“選ばれる活動”でもある
求人票に条件を書いて待っているだけでは、もはや人は集まりません。
求職者は「働く場所を選んでいる」時代。
だからこそ、会社も“選ばれる努力”が必要です。
「従業員はお客様」という視点を持ち、会社の魅力を発信し、働く価値を伝える。
その積み重ねが、「この会社で働きたい」と思ってくれる人材との出会いにつながります。
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