品揃えは「経営の意思決定」だ——惰性の棚が売上を止めている

「この商品、なんで置いてあるんだろう…」

あなたのお店や会社のラインアップを眺めたとき、そう感じたことはありませんか?

気がつけば増えていた商品、断れずに続けているサービス、昔は売れたけど今は動いていないもの。

品揃えが惰性になっていませんか?

セブン-イレブンを日本一の流通チェーンに育てた鈴木敏文氏は、「品揃えは経営者の意思表示だ」と繰り返し語っていました。棚に何を置くかは、単なる仕入れの話ではありません。誰に、何を、どんな価値で届けるかという、経営の根幹に関わる選択です。

この記事では、品揃えを「戦略」として設計するための考え方と、小さな会社でもすぐに使えるフレームワークをお届けします。

「お客様のために」では棚は変わらない

鈴木氏が強調していた言葉に、こんなものがあります。

「お客様のために」ではなく「お客様の立場で」

一見、似ているようで、実はまったく違います。

「お客様のために」と考えると、売り手の都合や思い込みが入り込みやすくなります。「この商品はいいものだから、きっと喜んでもらえる」という発想です。

一方、「お客様の立場で」考えるとは、自分がそのお客様だったら、この場面で何を求めるかを想像することです。

この違いを象徴する有名な事例があります。

マクドナルドが「お客様はヘルシーなものを求めている」という声に応え、サラダをメニューに加えたところ、実際にはほとんど売れませんでした。アンケートでは「ヘルシーなものが食べたい」と答えていたお客様が、いざカウンターに立つと、バーガーとポテトを注文したのです。

「お客様のために」= お客様が言っていること(ヘルシーなものが食べたい)に応える
「お客様の立場で」= お客様がマクドナルドに来た瞬間に何を求めているかを想像する

この違いがわかると、品揃えの設計がまったく変わります。

たとえば——

  • 雨の日に急いで買い物をするお母さんは、何を一番に手に取りたいのか?
  • 昼休みに12時から買いに来る会社員は、どんな選び方をするのか?

棚に何を並べるかは、この「立場の想像力」から始まります。

あなたの会社の商品・サービスラインナップは、お客様の立場から設計されていますか? それとも、過去の経緯と売り手の都合で積み上がってきただけになっていませんか?

品揃えには「捨てる勇気」が必要

品揃えが惰性になる最大の原因は、「ゼロではないから」という理由で残し続けることです。

少しでも売れている、お客さんが一人いる、昔は売れた——そういう理由で商品やサービスを残し続けた結果、棚はどんどん複雑になっていきます。

でも棚というのは、有限のリソースです。

小売であれば物理的な棚の広さ、中小企業であれば営業マンの時間、接客の手間、在庫のキャッシュ。これらはすべて有限です。

「まあまあ売れている」ものを残し続けることは、「もっと売れるかもしれないもの」のスペースを奪っているとも言えます。

品揃えの見直しとは、加えることよりも削ることです。そこには勇気が要ります。でも、その勇気が棚を強くします。

商品マトリクスで”全体の歪み”を見る

個別の商品を見ていると、全体のバランスが見えなくなります。そこで使えるのが「商品マトリクス」です。

縦軸に「利益率(高い・低い)」、横軸に「回転率(速い・遅い)」を取り、自社の商品・サービスを当てはめてみましょう。

回転率:高回転率:低
利益率:高◎ 主力にすべき△ 売り方を変える
利益率:低○ 量で補う× 撤退を検討

右下(×)に分類された商品は、動きが鈍くて利益も薄い。これが死に筋です。

「でも、長年のお付き合いで」「社長が好きな商品だから」——そうした感情的な理由で死に筋を抱え続けていませんか?

あなたの会社のラインアップを、一度このマトリクスに当てはめてみてください。歪みが見えてくるはずです。

サンドイッチの例で考える

たとえばコンビニのサンドイッチ棚なら、縦軸は価格帯、横軸は「野菜系・肉系・魚系・卵系」といった内容で分類します。

  • 肉系ばかり揃えていないか?
  • 野菜系が少なくて、健康志向のお客様を取りこぼしていないか?
  • すべての価格帯をカバーできているか?

品揃えには偏りが生まれやすいものです。マトリクスで見ると、その偏りが一目でわかります。

これは、飲食店のメニュー設計でも、BtoB企業のサービスラインナップでも、まったく同じ考え方が使えます。

「売れる理由」を考える習慣が品揃えを磨く

単品管理の本質は、「売れた事実」から「売れた理由」を考えることです。

  • 午前中に菓子パンがよく売れる → 朝ごはん代わりに買っている?
  • 雨の日にホット飲料が伸びる → 体が温まりたい気分と連動している?

「なんとなく売れた」で終わらせず、仮説を立てる。その仮説を次の品揃えや陳列に反映する。そしてまた数字を見る。

このサイクルを回すことが、“考える商売”です。

難しいシステムは必要ありません。エクセル一枚で商品別・曜日別の売上を記録するだけで、仮説を立てる材料は十分に集まります。

単品管理の具体的な進め方については、こちらの記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

中小企業の「品揃え設計」チェックリスト

自社の品揃えを見直す際に、以下の問いを使ってみてください。

お客様の立場で設計されているか?
売り手の都合や過去の経緯ではなく、お客様の「場面・気分・目的」から逆算できているか。

死に筋を把握しているか?
粗利率・回転率の低い商品・サービスを、感情抜きで洗い出せているか。

撤退の基準があるか?
「いつまでに何が達成できなければ外す」という基準を設けているか。

空白地帯はないか?
マトリクスで見たとき、お客様が求めているのにラインアップがない領域はないか。

品揃えを定期的に見直す場があるか?
月1回でも「棚の棚卸し」をする時間を経営の場に組み込めているか。

まとめ——品揃えは経営者の「選択」である

品揃えは、誰かが勝手に決めてくれるものではありません。

惰性に任せれば、棚は自然と死に筋で埋まっていきます。お客様の声に振り回されれば、方向性のないラインアップができあがります。

「何を置くか」は、「誰のために、何屋でいるか」という経営者の選択です。

小さな会社だからこそ、棚のリソースは限られています。だからこそ、品揃えの設計は真剣に向き合う価値があります。

まず今日、自社の商品・サービス一覧を並べて、「これは誰のために置いているのか」を一つひとつ問い直してみてください。

その問いが、あなたの会社の棚を強くする第一歩です。

「絞る」という考え方をさらに掘り下げたい方は、こちらの記事もおすすめです:https://nico84blog.com/archives/491

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