──No.2に求められる“答えを出さない力”──
中小企業のNo.2に求められるスキルは何でしょうか?
高い業務遂行能力? 現場との信頼関係? 経営数字への理解力?
もちろん、それらも重要です。しかし、もうひとつ見落とされがちな能力があります。それが「問いを立てる力」です。
「正解を出す力」ではなく、「問いを立てる力」。
この力があるかどうかで、組織の未来は大きく変わっていきます。
正解を出すことの限界
中小企業のNo.2は、現場の責任者であり、社長の補佐役でもあります。そのため、日々の業務では「正解らしきもの」をスピーディーに出し、現場を回す力が求められます。
しかし、「目の前の問題を解決する力」と、「組織を前に進める力」は、必ずしも同じではありません。
むしろ、No.2が“正解を出すこと”に慣れてしまうと、組織は停滞します。
なぜなら、「正解を出す」ことは往々にして「過去の延長線上」にあるからです。
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前回はこうだったから、今回もこのやり方でいこう。
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たぶんこれが一番無難だと思います。
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他社もやってるし、この方法が主流です。
それらは「妥当」であっても、「創造的」ではありません。
変化の激しい時代において、No.2がやるべきことは、「答え合わせ」ではなく、「問い直し」なのです。
なぜ“問い”が大切なのか
問いを立てるとは、現状を疑い、見直し、視点を変えることです。
たとえば、以下のような問いは、No.2から発されることで初めて意味を持ちます。
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「この施策、やり続ける理由は何ですか?」
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「私たちがやりたかったのは、本当にこれだったでしょうか?」
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「いま問題になっているのは、“結果”ではなく“構造”では?」
こうした問いは、場に「思考の余白」を生み出します。
スタッフに対しては、自分たちの仕事の意味や方向性を再確認する機会になり、
社長に対しては、無意識のうちに固定化していた方針を見直す「内省のトリガー」になります。
「問い」は、組織の空気を揺さぶり、動かす起点なのです。
経営者の盲点を補うNo.2の役割
経営者は、未来を見て走る存在です。その分、足元の違和感や変化に気づきにくくなります。
「いま、現場では何が起きているのか」
「この戦略は、現実的に遂行可能なのか」
No.2は、社長が見えない領域を見つめ、そこから「問い」を届ける存在です。
それは反論や批判ではなく、「組織の盲点を言語化する」行為です。
問いは時に不安を呼び起こします。しかし、それを避けて通る限り、真の変革は起きません。
No.2が恐れずに問いを立てることで、社長と現場の間に「対話の余地」が生まれ、組織に流れる空気が変わっていきます。
問いを立てるための3つの視点
では、どうすれば良質な「問い」を立てられるようになるのでしょうか。
以下の3つの視点を意識してみてください。
① 時間軸で問う
「このままで半年後、同じ結果が出るでしょうか?」
「3年前と比べて、何が変わっていないですか?」
過去・現在・未来という時間軸を意識すると、目の前の問題を“点”ではなく“線”で捉え直すことができます。
② 構造で問う
「この問題は、誰と誰の関係性から生じていますか?」
「表面的な課題の背景には、何が横たわっていますか?」
問題の“構造”を掘り下げて考えると、再発防止策や本質的な改善に近づけます。
③ 原点で問う
「そもそも、私たちは何を成し遂げたかったのか?」
「この事業の存在意義は何か?」
日常に埋もれてしまいがちな「目的」や「理念」を再確認する問いは、組織に芯を取り戻させます。
問いを恐れず、場に置く
問いを立てるという行為は、勇気が要ります。
特に中小企業では、雰囲気や人間関係が濃く、空気を乱すことを避けたがる傾向があります。
それでも、No.2が“問い”を恐れてはいけません。
その問いが組織の停滞を打破し、見直しのスイッチを入れ、方向性を正す一歩になるからです。
問いは、必ずしも「答え」を求めるものではありません。
答えのない問いでも、「考えるきっかけ」としての力を持っています。
終わりに──問いが組織の未来をつくる
No.2の仕事は、正解を出し続けることではありません。
むしろ、「本当にこのままでいいのか?」と立ち止まる時間を、組織にもたらすこと。
No.2が良質な問いを立てられる組織は、必ず強くなります。
なぜなら、「考える文化」が根づくからです。
そして、考える文化のある組織は、どんな変化の時代でも柔軟に進化できます。
「問いを立てられる人」──それこそが、これからのNo.2に最も求められる資質ではないでしょうか。
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