「何かあったら言ってね。」
職場でよく聞くこの言葉。部下や同僚を気づかう、優しさの表れです。でも、実際には「何も言えなかった」という声が後から聞こえてくることも少なくありません。
その理由は、「言ってね」という言葉の優しさが、相手にとっては“距離”にも感じられることがあるからです。
今回は、職場の信頼関係を深める「声かけの深さ」について考えてみたいと思います。
優しさは伝わる。でも、本当に必要なのは「気づいて、踏み込んでくれる人」
仕事においては、誰もが何かしら悩みやストレスを抱えながら働いています。しかしそれを自分から言葉にするのは、案外難しいものです。
「迷惑かけたくない」
「我慢できないほどじゃないし」
「言ったところで、変わらないかもしれない」
そんな思いが、口をつぐませます。
だからこそ、「何かあったら言ってね」ではなく、
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「最近、少し疲れて見えるけど、大丈夫?」
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「この前のプロジェクト、難しかったよね。気になることあった?」
と、“こちらから踏み込む”声かけが、信頼を築くカギになるのです。
声かけに必要なのは「深さ」──観察・仮説・関心
信頼をつくる声かけには、3つの視点が求められます。
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観察:変化に気づくこと
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いつもより口数が少ない
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作業の手が止まっている
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雰囲気が沈んでいる など
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仮説:背景を想像すること
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「あの打ち合わせ、気にしてるのかな」
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「家庭の事情が影響してるかもしれない」
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関心:相手の立場に立って声をかけること
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「私が同じ立場だったら、どんな言葉が欲しいだろう?」
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「どこまで聞いてもよさそうか?」
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この3つが揃うことで、「気にかけてくれている」が「本当に見てもらえている」に変わります。
実践例:踏み込んだ声かけの言い回し
以下は、実際に使える声かけの一例です。状況に応じて応用してください。
状況 | よくある声かけ | 深さを加えた声かけ |
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様子がいつもと違う | 「元気ないね」 | 「○○の件、大変だったよね。ちょっと振り返ってみる?」 |
忙しそうな様子 | 「無理しないでね」 | 「最近ずっと詰まってるけど、タスクの整理手伝おうか?」 |
成果が出ていない | 「頑張ってね」 | 「このやり方、少し変えてみる?一緒に検討しよう」 |
リーダーの仕事は、「言わせること」より「感じ取ること」
組織におけるリーダーの役割は、成果を出すことだけではありません。メンバーが安心して働ける状態をつくることも、大切な“見えない成果”です。
声かけの深さとは、「話す」ではなく「寄り添う」姿勢。
誰かが声を上げる前に、異変に気づき、先回りして声をかける。そうした行動こそが、「この人には話せる」「このチームなら大丈夫」と感じてもらえる信頼の土台になります。
まとめ:やさしさを“行動”に変えられる人が、信頼される
「何かあったら言ってね」は、優しさの表現です。
でも、リーダーに求められるのは、それ以上に「気づいて、踏み込める力」。
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変化を見逃さない観察力
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相手の気持ちを想像する感受性
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一歩踏み込む勇気
これらが重なるとき、言葉以上の信頼が生まれます。
あなたのチームの誰かも、今、心の中で「気づいてほしい」と思っているかもしれません。
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