中小零細企業では、「阿吽の呼吸」や「社長の一声」でルールが決まる場面が多く、明文化されていない=属人化・ブラックボックス化しやすいのが現実です。
特に総務まわり(勤怠、備品、社内ルール、福利厚生など)は「昔からそうしてるから」「前任がやってたから」で引き継がれていることが多く、これは大きなトラブルを引き起こすこともあります。
「なんとなく」で動いていないか?
「うちは小さな会社だから、ルールなんてなくても回ってるよ」
そう思っていないでしょうか?
たしかに、中小企業の多くは少人数で運営されており、意思決定もスピーディ。
それがいいところではありますが、だからこそ、言語化されない“なんとなく”のルールがそのまま放置されがちです。
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有給の申請って、誰に、いつ伝えるの?
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遅刻や早退の連絡って、LINEでいいの?
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備品が足りないときって、どうやって注文するの?
こういった「細かいけど毎日起こること」が、社員ごとに違う解釈で動いている。
それがトラブルの火種になっていくのです。
明文化されていないルールがもたらす4つのリスク
① 不公平感と不信感
同じことをしても、社員によって対応が違う。「あの人はOKで、私はダメだった」
そんな不満は、小さな組織ほど尾を引きます。
② 属人化による業務の停滞
「これ、〇〇さんがいつもやってたけど…どうやるんだっけ?」
引き継ぎもマニュアルもなく、急に担当が抜けたときに対応できないのは、よくある話です。
③ 採用・定着率の低下
新しく入ってきた人がルールの曖昧さに戸惑うと、早期退職にもつながります。
「この会社、大丈夫かな…」という印象は、ちょっとした混乱で生まれます。
④ トラブル化すると“思った以上に面倒”になる
特に労務・勤怠・有給・ハラスメントといった分野は、
後々のトラブル時に、労基署・社労士・弁護士対応まで発展することがあります。
「そんなつもりじゃなかった」「前からこうだった」では済まず、
記録がない・ルールが曖昧=会社側が不利になるケースが多いのです。
「就業規則」じゃなくていい。まずは“社内ルール集”から
「就業規則を作るのは大変そうだし、社労士にも頼まないと…」
そんな声もよく聞きますが、いきなり制度化する必要はありません。
まずは、以下のような“小さな明文化”から始めましょう。
小さく始める!ルール整備ステップ
ステップ1:現場の“現実ルール”を書き出す
まずは「今どう運用しているか」を洗い出します。
社員にヒアリングしながら、暗黙のルールを見える化しましょう。
ステップ2:社内FAQ・運用メモを作る
Google DocsやNotionで十分です。
「これはどうしたらいい?」をまとめた社内ハンドブックのようなものをつくります。
例:
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有給申請は、直属上司に◯日前までにSlackで連絡
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遅刻・早退の連絡は、当日9:30までに電話で
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備品の購入は、毎週金曜日に〇〇がまとめて発注
ステップ3:「ルール」を“説明できる形”にしておく
明文化の目的は「社員に覚えさせること」ではなく、共有できる状態にすることです。
一度決めたら、「どこを見ればいいか」が分かるようにしましょう。
トラブル予防こそが、“会社を守る仕組み”になる
社員が安心して働ける環境は、社内ルールの明文化から生まれます。
一方で、曖昧なルールは、万が一のときに会社をリスクにさらすこともあります。
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有給を拒否したつもりが「違法扱い」された
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勤怠記録の不備が「未払い残業」として訴えられた
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ハラスメント対応がなされず、SNSに書かれた
こういったケースは、年々中小企業にも増えてきています。
ルール整備は“備え”であり、最大のリスクヘッジでもあるのです。
まとめ|“小さなルール整備”が、組織の土台をつくる
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中小企業には「なんとなくルール」が多い
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明文化されていないことで、不信感・属人化・トラブルのリスクが高まる
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まずは小さなFAQや社内手引きから始めよう
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明文化は、社員の安心と、経営側のトラブル回避の両方につながる
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