「やる気があって、頑張り屋さんだから採用した。でも、なぜかうまくいかない」
そんな経験はありませんか。
「やる気」を採用基準の軸に置く中小企業は少なくありません。でも実は、やる気の高さだけで採用・配置を決めていると、知らないうちに組織の中に「最も危険な人材」を増やしてしまっている可能性があります。
今回紹介するのは、プロイセン(ドイツ)の軍人たちが残したとされる「将校の4分類」。人材採用・配置において、今も驚くほど実用的な視点を与えてくれる考え方です。
「やる気×実力」で人を4つに分ける
この分類は、「実力(知性・判断力)」と「やる気(勤勉さ・行動力)」の2軸で、人材を4つのタイプに分けるものです。
| 実力あり | 実力なし | |
|---|---|---|
| やる気あり | ②参謀・右腕タイプ | ④最も危険なタイプ |
| やる気なし | ①最高指揮官タイプ | ③そのままでいいタイプ |
提唱者については諸説あり、大モルトケ(ヘルムート・フォン・モルトケ)に帰属されることが多いですが、クルト・フォン・ハンマーシュタイン=エクォルトやエーリッヒ・フォン・マンシュタインといった同時代のプロイセン・ドイツ系将軍の言葉とする説もあります。いずれにせよ、軍の人材登用を真剣に考えた人物たちが辿り着いた、実践知です。
一つひとつ見ていきましょう。
①「実力あり×やる気なし」——最高指揮官向き
最も直感に反するのが、このタイプです。
「やる気がない人が最高指揮官?」と思うかもしれません。でも、少し考えてみてください。
実力があるのにやる気がない、とはどういうことでしょうか。それは言い換えると、「本当に重要なことだけを見極めて、そこにだけ動く」ということです。
瑣末なことには手を出さない。余計な仕事を増やさない。「これはやらなくていい」と判断できる。こういった人物が組織のトップに立つと、チームは無駄な労力を使わずに済みます。
中小企業で言えば、次のような人がこれに当たるかもしれません。
- 何でも自分でやらず、任せ方が上手い
- 細かい作業より「どこに集中すべきか」を考えることが得意
- 一見のんびりして見えるが、ここぞというときの判断が鋭い
②「実力あり×やる気あり」——参謀・右腕タイプ
優秀で、かつ行動力もある。いわゆる「デキる人」のイメージに最も近いタイプです。
このタイプは、計画を立て、段取りを整え、細部まで考え抜くことができます。No.2や参謀的な役割に非常に向いています。
ただし、このタイプをトップに置くのは要注意です。
実力もやる気もあるがゆえに、自分で動きすぎてしまうことがあります。組織が「この人がいないと回らない」状態になりやすく、部下が育たないまま属人化が進む、というリスクがあります。
このタイプには、「考え、動く」よりも「考え、任せる」ことを求める役割が最も力を発揮できる場所です。
③「実力なし×やる気なし」——そのままでいいタイプ
このタイプは、一見問題ありそうに見えますが、実はそうでもありません。
実力もやる気もないということは、余計なことをしないということでもあります。与えられた仕事を粛々とこなし、組織に余計な混乱を起こさない。そういった役割は、どんな組織にも必要です。
経営者やNo.2がこのタイプに過度にエネルギーを使うのは、あまり得策ではありません。「変えよう」「育てよう」と力を注ぐよりも、このタイプが安心して働ける環境を整えておく程度で十分なことが多いです。
④「実力なし×やる気あり」——最も危険なタイプ
この分類で最も重要なのが、このタイプです。
やる気があるのは良いことのはずなのに、なぜ「最も危険」なのか。
答えはシンプルです。間違った方向に、全力で突き進むからです。
判断力が十分でないまま、エネルギーだけは高い。自分なりに「よかれ」と思って動くため、止めにくい。しかも本人は一生懸命なので、周囲も指摘しにくい。気づけば組織に不要な仕事と混乱が積み上がっている——。
こういうパターン、思い当たる人はいませんか。
採用面接でやる気と熱意だけを基準にしてしまうと、このタイプを増やすリスクがあります。
採用・配置で使うための3つの視点
この4分類を実際の人材採用・配置に活かすには、次の3つの視点が参考になります。
① 「やる気」だけを採用基準にしない
面接では、どうしてもやる気・熱意が印象に残ります。「うちの会社に入りたい理由」「将来のビジョン」を熱く語られると、好感を持つのは自然なことです。
しかし採用で本当に見たいのは、過去にどんな判断をし、どんな結果を出したかという実績です。やる気はあって当然。その上で、実力の片鱗が見えるかどうかを確認する習慣をつけましょう。
② ポジションと特性を合わせる
「このポジションに何タイプが向いているか」を先に考えてから採用・配置するのが理想です。
参謀的な役割には②タイプ、現場のトップには①タイプ、定型業務には③タイプ——というように、特性に合った役割を用意できれば、人は力を発揮しやすくなります。
③ ④タイプを早めに見極め、「方向」を正す
④タイプは悪意があるわけではありません。熱意はあるので、方向さえ正しく向ければ戦力になります。
問題なのは「放置すること」です。やる気があるぶん、放置すると被害が広がります。早めに気づき、明確なフィードバックと役割の再設定を行うことが大切です。
まとめ——「やる気」はスタート地点にすぎない
この4分類が私たちに教えてくれるのは、「やる気は必要条件だが、十分条件ではない」ということです。
やる気があっても、実力が伴わなければ組織に混乱をもたらします。実力があっても、役割が合わなければその力は活きません。
採用や配置で悩んでいる経営者・No.2の方に、ぜひ一度この4分類のレンズで、自分の組織を眺めてみていただければと思います。
意外と「あ、あの人はこれだ」と見えてくるものがあるかもしれません。
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