「副業で月20万くらい、なんとかならないかな」
そんなことを考えたこと、ありませんか?
わたしはあります。しかもけっこう本気で調べました。
きっかけはベトナム旅行。「どうせ行くなら、現地で仕入れてメルカリで売れば、旅費くらい回収できるんじゃないか?」という、よくある思いつきです。
結論から言うと、やめました。
でもこの記事は「物販はやめとけ」という話ではありません。
調べた結果、物販は数字上ちゃんと成立しうるビジネスでした。それでもわたしは撤退した。その判断のプロセスこそが、経営にも副業にも使える話だと思ったので、全部書きます。
きっかけ:旅行のついでに20万円、稼げないか?
発端は軽いものでした。
ベトナム旅行の予定がある。現地の物価は安い。日本で人気のものを買って帰って、メルカリで売れば20〜30万円くらいにならないか——。
「仕入れて売るだけ」。シンプルに聞こえますよね。
ネットで検索すれば「海外仕入れ×メルカリで月30万」みたいな記事はいくらでも出てきます。
でもわたしの職業病で、まず数字と法律を調べることから始めました。
これが結果的に、仕入れ前の撤退につながります。
検証1:旅行ついでの輸入転売——法律と物量の壁
最初にぶつかったのは、法律でした。
「お土産」と「商品」は税関上まったく別物
海外で買ったものでも、販売目的で持ち込む場合は、携帯品であっても輸入申告が必要です(いわゆる旅具通関の枠外になります)。課税価格30万円以下なら、インボイスを添えて携帯品として申告・納税する方法があります。
「お土産のフリして持ち込めばバレない」的なノウハウも見かけますが、それは単なる申告漏れです。ここは最初から選択肢に入れませんでした。
※通関手続きの詳細は変わることがあるので、実行する場合は税関やJETROの最新情報を確認してください。
ベトナムコスメは薬機法の壁
現地で人気のコスメを仕入れる案は、すぐ消えました。
化粧品を輸入して他人に販売するには、薬機法上の許可が必要です。個人輸入した化粧品を他人に売った時点で薬機法違反のリスクがあり、そもそもメルカリも個人輸入化粧品の出品を禁止しています。
※このあたりも解釈が絡む領域なので、断定は避けます。検討する方は必ず専門家に確認してください。
そして物量の壁——スーツケースに入らない
法律をクリアできる雑貨で試算してみました。実際に調べた例です。
- ベトナム限定のスタバのバッグ:仕入 1,100円 → メルカリ相場 2,900円
- 手数料10%(290円)+送料を引くと、利益は約1,300円/個
悪くない数字に見えます。でも目標は20万円。
20万円 ÷ 1,300円 = 154個。
スーツケースに、バッグ154個。入るわけがありません。
「旅行ついでに20万」は、法律の前に物理で破綻しました。
検証2:小口輸入ビジネスとして再設計——成立はする、が
思いつきレベルがダメなら、ちゃんと設計したらどうか。次はビジネスとして組み直してみました。
設計条件
- 年3〜4回、買付を目的に渡航する
- 1回の仕入れは課税価格20万円以内に収める(簡易税率が適用できて通関がシンプル)
- 商品は薬機法・食品衛生法に触れるコスメ・食品を除外した雑貨系に絞る
候補はこんなイメージです。
- ベトナム:バッチャン焼の食器、コンバースCT70
- 韓国:文具・デザイン雑貨
- 台湾:茶器、レトロ文具
収益試算
- 仕入 20万円/回
- 販売単価は仕入の2.5〜3倍で設定
- 在庫消化率70%と想定
- → 1回転あたりの利益 10〜15万円
年3回転で、年間30〜45万円。
……成立はします。赤字にはならない設計です。
でも正直な感想は「これ、割に合うか?」でした。渡航して、買い付けて、持ち帰って、150個単位で出品・梱包・発送して、年30万円。時給に換算する勇気が出ませんでした。
※数字はすべてわたしが調べた実例ベースの試算・推計です。相場や為替で変わります。
検証3:eBay輸出——一番筋が良かった案
発想を逆にしてみました。輸入がダメなら、輸出はどうか。
輸出なら日本の規制の壁が消える
日本のものを海外に売る分には、薬機法や食品衛生法という「国内販売の壁」がなくなります(相手国の規制は別途ありますが)。日本のキャラクター文具や雑貨は、海外に固定ファンがいます。
実データも調べた
eBayのリサーチツール(Terapeak)の集計を紹介していた記事によると、サンリオ文具カテゴリは2024年11月〜2025年2月の3ヶ月で販売数2,965個、平均販売価格4,943円(古物商向けWebメディアの2025年2月記事からの二次引用です)。
損益イメージはこうなります。
- サンリオ文具セット:仕入 2,000円 → 販売 5,000円
- eBayの手数料は売上の約17〜20%(落札手数料13.25〜15.3%+国際手数料+Payoneerの受取手数料)
- 手数料・国際送料を引いて、利益 約1,000円/セット
しかも仕入れはネットで完結できます。小売サイトで試し、軌道に乗ったらNETSEAなどの卸サイトに切り替える二段構え。渡航すら不要です。
ただし、時間がかかる
新規アカウントには出品リミットがあり、最初は3品/200ドルから。月20〜30万円の利益を目指すなら、実績を積んでリミットを上げる育成期間が6ヶ月〜1年必要です。
3案の中では、数字上いちばんマシでした。規制リスクが低く、市場データもあり、仕入れも国内で完結する。
でも、ここでわたしは立ち止まりました。
撤退判断:数字は成立する。でも「自分」が回らない
ここからが、この記事の本題です。
3つの案を検証して、eBay輸出は「やれば多分、それなりに稼げる」ところまで見えました。市場はある。利益率も出る。参入の手順も明確。
じゃあなぜやらないのか。
物販は最終的に「リサーチ→仕入→出品→梱包→発送」の反復作業ゲーになるからです。
利益1,000円/セットなら、月20万円には毎月200セット。毎日6〜7個を出品し、梱包し、発送する。それを来月も、再来月も、ずっと。
ここで自分に問いました。「おまえ、それ続くのか?」と。
答えはノーでした。わたしの特性は「設計と検証が好き、作業の反復は続かない」。実際、この検証プロセス自体はめちゃくちゃ楽しかったのに、その先の日常業務を想像した瞬間、気が重くなったんです。
気づいたのはこれです。
「儲かるか?」の検証はしていたのに、「自分が回せるか?」の検証が抜けていた。
事業の判断には2つの軸があります。
- 事業性:市場はあるか × 利益率は出るか
- 適性:自分の性格に合うか × 自分の時間の使い方と合うか
事業性だけで判断すると、「数字は正しいのに続かない事業」を始めてしまう。
これ、副業に限らず、あなたの会社の新規事業でも同じではありませんか?
まとめ:撤退は失敗ではなく、検証の成功
今回の検証でわたしが失ったものは、調査に使った時間だけです。
仕入れをする前、アカウントを育てる前、在庫を抱える前に結論が出た。
これは失敗ではなく、検証コストを最小で済ませた成功だと思っています。
管理会計の言葉で整理すると、こうなります。
- 検証コスト:結論を出すために払ったコスト。今回は調査時間のみ。仕入れ後に気づいていたら、在庫という形で何倍にも膨らんでいた
- 埋没原価(サンクコスト):すでに払って戻らないコスト。「ここまで調べたんだから」は判断材料にしない
- 機会費用:その時間で他に何ができたか。物販の反復作業に使う時間で、本業のコンテンツに何が作れるか——わたしの場合、答えは明白でした
「せっかく調べたのにもったいない」と一瞬思いましたが、それこそ埋没原価の罠です。調べた時間は戻りません。判断は常に「これから先」の数字だけで下す。
最後に、持ち帰ってほしいことをひとつだけ。
「儲かるか?」の前に、「自分(自社)が回せるか?」を検証する。
新規事業でも、副業でも、順番はこっちが先です。
数字の検証はツールと情報でできます。でも回すのは、あなた自身なので。
※本記事の法規制・税務に関する記述は執筆時点の調査に基づく一般的な情報です。実行される場合は、通関・薬機法は専門家や最新の公的情報を、確定申告(副業所得20万円ライン)や消費税還付などの税務は税理士に確認してください。

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