「自己肖定感が高い」だけでは仕事はできない——根拠なき自信が組織を壊す話

「自己肖定感を高めましょう」

ここ数年、ビジネス書でも SNS でも、こういうメッセージをよく見かけます。
自信を持つことは大切です。それは間違いない。

でもわたしは、ずっと引っかかっていることがあります。

「自己肖定感が高いのに、なぜか仕事がうまくいかない人」が増えていないか、 と。

実力が伴わない自信は、なぜ生まれるのか

心理学に「ダニング=クルーガー効果」という概念があります。

簡単に言うと、知識やスキルが低い人ほど、自分の能力を過大評価しやすいという現象です。

わかっていないから、わかっていないことに気づかない。
経験が浅いから、難しさが見えない。
だから「自分はできている」と思ってしまう。

逆に、本当に実力のある人ほど、「まだまだ足りない」と謙虚になりがちです。

自己肖定感が高い人が全員そうだとは言いません。
ただ、根拠のない自信と、根拠のある自信は、まったく別物です。

「自己肖定感が高いバカ」が組織に与えるダメージ

ちょっと過激な言い方ですが、これは現場でよく起きています。

実力が伴わないまま自信だけが高い状態の人は、こういう行動をとりがちです。

  • 自分のやり方を疑わないので、フィードバックが入らない
  • 「こうすべきだ」という確信で動くので、止めにくい
  • 失敗しても「周りの問題」に帰因する
  • 経営者やNo.2の言葉より、自分の判断を優先する

本人に悪意はありません。むしろ一生懸命なことが多い。
だから余計に扱いにくく、放置すると組織に混乱が広がります。

自己肖定感より「自己評価の精度」を上げる

ここで大切な視点を一つ。

自己肖定感を高めることより、自己評価の精度を高めることの方が、仕事においては重要だとわたしは思っています。

「自分は今、何ができて、何ができないのか」を正確に把握できるか。
これが高い人は、成長が速い。

なぜなら、「できていないこと」が見えてはじめて、学ぶ意欲が生まれるからです。

自己肖定感が高くても、自己評価の精度が低ければ、成長の入口を自分で塞いでいることになります。

中小企業は「井の中の蛙」になりやすい

小さな組織は、比較対象が少ない。

同じ会社の中だけで評価されていると、「自分はできている」と思いやすい環境があります。社内で一番詳しい、社内で一番成果を出している——それは事実かもしれない。でも、外の基準で見たときにどうか、は別の話です。

これはまさに「井の中の蛙」と同じ構造です。

井戸の中では本当に優秀だったのに、転職や業界交流をきっかけに「あれ、自分って普通だったのか」と気づく。そういうケースは珍しくありません。

逆に言えば、外の世界との接触が、自己評価の精度を上げる最短ルートでもあります。

異業種交流、勉強会、外部の研修——そういった機会を意図的につくることが、経営者にとってもNo.2にとっても、地味に重要な投資だとわたしは思っています。

管理職・No.2としてどう関わるか

では、こういうタイプの部下と、どう向き合えばいいのでしょうか。

ポイントは「否定」ではなく「現実との接触」です。

いくら言葉で指摘しても、自己評価の精度が低い人には届きにくい。
それより、「自分のアウトプットが客観的にどう評価されているか」を、数字や事実で見せることの方が効果的です。

  • 売上や数値など、客観的な成果を一緒に振り返る
  • 「あなたのここがダメ」ではなく「この結果について、あなたはどう見ているか」と問いかける
  • 小さな成功体験を積ませながら、「根拠のある自信」に育てていく

焦って変えようとせず、時間をかけて現実を見せる。それがこういうケースへの接し方です。

そして、自分自身はどうか

最後に、これを読んでいるあなたへ一つ問いかけです。

「自分は、ちゃんと自己評価の精度が高いだろうか」

No.2や管理職は、会社の中では「できる人」として扱われることが多い。
社長にも信頼されている。部下からも頼られている。

だからこそ、気づきにくいのです。

自分の判断が正しいかどうかを、外からチェックしてもらう機会はありますか?
耳の痛いことを言ってくれる人は、身近にいますか?

自己評価の精度は、内省だけでは上がりません。
現実との接触と、信頼できる他者のフィードバックで初めて磨かれます。

「自己肖定感が高い」ことは、悪いことではありません。
ただそれが「根拠のある自信」に裏打ちされているかどうか——そこを問い続けることが、長く成長し続けるための条件だと、わたしは思っています。

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