「高い時給は損だ」と思っていませんか——コストコが証明した、人件費を投資に変える経営戦略

「うちは中小企業だから、高い時給なんて払えない」

そう思っていませんか?

でも少し待ってください。
コストコが高い時給を払い続けているのは、「体力があるから」ではありません。
高時給にした方が、トータルのコストが下がるからです。

この記事では、コストコの戦略を入口に、「人件費の考え方を変える」ヒントをお伝えします。

コストコの「高時給」——その本当の理由

コストコのアルバイト時給は、全国一律で1,500円からスタートします。
さらに1,000時間働くごとに自動的に昇給する仕組みも整っています。
2024年には一部地域で時給1,850円という報道も出ました。

小売業の平均と比べると、明らかに高い水準です。
「なぜそこまで払えるのか」と不思議に思う経営者は多いでしょう。

答えは、コストコ自身がこう語っています。

「高時給にすれば誰も辞めないので、教育コストが減ってトータルで見るとプラスになる」

つまり、高時給は「福祉」ではなく「戦略」なのです。

数字が語る——離職率とコストの関係

小売業界の平均離職率は、年間20%以上と言われています。
10人いれば、2人以上が毎年辞めていく計算です。

コストコはどうでしょうか。
全体の離職率は約13%。
さらに、1年以上働いているスタッフに限ると6〜7%まで下がります。

この差が何を意味するか、経営者として考えてみてください。

採用にかかるコストは、一人あたり平均約100万円(中途採用の場合)とも言われます。
求人広告費、面接の時間、入社後の研修、一人前になるまでのロス……
これらすべてを合算すると、決して大げさな数字ではありません。

コストコが離職率を業界平均の半分近くに保てているということは、採用・教育にかかるコストを大幅に圧縮できているということです。

時給を上げた分のコストは、採用と教育のコスト削減で十分に回収できる——これがコストコの計算式です。

イケアも同じ発想——「人をつくる会社」

同じ発想を持つ企業がもう一つあります。スウェーデン発祥の家具メーカー、イケアです。

イケアは「自分たちはただ家具をつくっているのではなく、人をつくる会社だ」と表現します。
パート・アルバイトも含めた全従業員を「正社員として扱う」という発想のもと、時給水準も高く設定しています。

これはスウェーデンの「同一労働同一賃金」の考え方に基づくものですが、日本でも同じ仕組みを導入し、定着率の向上と採用コストの削減につなげています。

コストコもイケアも、共通しているのは一点です。

人件費を「コスト」と見ず、「投資」として捉えていること。

あなたの会社の「見えないコスト」を計算してみてください

経営者として、一度こう考えてみてください。

あなたの会社で、ここ3年間に何人が辞めましたか?
その採用と教育にかかったコストは、合計でいくらになりますか?

多くの中小企業では、採用コストを「お金で払った分」しか見ていません。
しかし実際には、

  • 面接や選考にかけた経営者・管理職の時間
  • 入社後の教育係の手間
  • 習熟するまでの期間に生じるミスや非効率
  • 辞めた後の穴埋め期間の現場疲弊

これらすべてが「見えないコスト」として積み上がっています。

時給を月1〜2万円上げることと、毎年採用を繰り返すこと——どちらが本当に高いコストでしょうか?

「人件費率を下げよう」は正しい問いか——率より総コストで考える

「人件費率が高すぎる」という話をよく耳にします。
飲食業なら30〜40%、小売業なら15〜25%……といった業種別の目安があり、そこから外れると「削らなければ」と感じる経営者は多いでしょう。

でも、率だけを見て判断するのは危険です。

たとえば、人件費率を下げるために時給を抑えたとしましょう。
スタッフが定着せず、毎年採用を繰り返す。
その採用コストと教育コストは、損益計算書の「人件費」には現れないことも多い。

率は下がっているのに、トータルのコストは上がっている——そういう状態に陥っているケースは少なくありません。

コストコが問いかけているのは、まさにここです。
「人件費率を下げることが目的ではない。人にかかるトータルコストを最小化することが目的だ」という発想の転換。

人件費率はあくまで経営の「モノサシ」の一つです。
率を管理することは大切ですが、率を下げようとして離職を増やし、採用と教育のコストがかさむなら、本末転倒です。

あなたの会社では、人件費率だけでなく、採用・教育・定着にかかるトータルコストで人材への投資を考えていますか?

「高時給投資」を中小企業に応用するには

コストコやイケアをそのままマネするのは難しいかもしれません。
でも、発想を取り入れることはできます。

まず「採用・離職のトータルコスト」を可視化する

感覚ではなく、数字で見てみてください。
直近2〜3年の採用コスト、早期離職率、教育にかけた時間。
これを洗い出すだけで、「人件費への投資対効果」が見えてきます。

「定着してほしい人」に集中して投資する

全員の時給を一律に上げるのではなく、「長く活躍してほしい人」「中核になってほしい人」に対して優先的に投資する。
それだけでも、組織の安定感は変わります。

「辞めない理由をつくる」意識を持つ

高時給はあくまで一つの手段です。
報酬以外にも、「この会社にいる理由」——成長できる環境、信頼できる上司、認められる文化——をつくることが、長期的な定着につながります。

まとめ——人件費は「払うもの」ではなく「かけるもの」

コストコの戦略が教えてくれるのは、こういうことです。

人件費は削るものではなく、戦略的にかけるもの

高時給は「社員へのプレゼント」ではありません。
離職率を下げ、採用と教育のコストを圧縮し、組織を安定させるための経営判断です。

「うちには払う余裕がない」と感じているなら、ぜひ一度こう問い直してみてください。

「採用と教育を繰り返すコストと、今の時給を少し上げるコスト——どちらが大きいか」と。

あなたの会社の「人件費の使い方」を見直す、最初の一歩になれば幸いです。

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