「お客様のことを一番に考えている」
そう言いながら、なぜかお客様が離れていく。
そんな経験、ありませんか?
「お客様のために」と「お客様の立場で」は似て非なるもの
以前のコラムでも触れましたが、「顧客のために」と「顧客の立場で」には、大きな違いがあります。
「顧客のために」は、売り手の視点で動くこと。
「顧客の立場で」は、相手の状況を想像しながら動くこと。
前者は善意の押しつけになりがちで、後者は本当の信頼関係につながる。
では、この2つを分けているものは何でしょうか。
それが、想像力です。
想像力とは「相手の頭の中に入ること」
想像力というと、クリエイティブな才能のように聞こえるかもしれません。
でもここで言う想像力は、もっとシンプルなことです。
「今この人は、何を考えているだろう?」
「この提案を受け取ったとき、どんな気持ちになるだろう?」
「この人の1日の流れはどうなっているだろう?」
そうやって、相手の状況・感情・タイミングを具体的に思い描く力のことです。
これがあるかないかで、同じ言葉でも、同じ商品でも、受け取られ方がまるで変わります。
想像力がないとどうなるか
たとえば、新商品の案内をするとします。
想像力のない営業は、「いい商品だから勧める」という自分の判断で動きます。
相手が今月資金繰りに追われていること、先週別の提案を断ったばかりであること——そういったことが頭に入っていない。
結果として、「空気が読めない人だな」と思われ、信頼を損なってしまう。
一方、想像力のある営業は、「今このタイミングで話すべきか?」を先に考えます。
場合によっては「今日は情報だけお伝えします、ご検討はゆっくりで」とひと言添える。
それだけで、お客様は「この人は私の立場をわかってくれている」と感じます。
これは営業だけの話ではない
同じことが、マネジメントでも起きています。
部下に仕事を任せるとき、「これくらいできるだろう」と思っていませんか。
上司として良かれと思って仕事を振っているけれど、相手が今どんな状態なのかを想像していない。
「従業員のために」と言いながら、実は「自分が期待する従業員像のために」動いている。
これも想像力の欠如から来るものです。
経営者やNo.2が「なぜ伝わらないのか」「なぜ動いてくれないのか」と悩むとき、
多くの場合、原因は技術や知識ではなく、相手への想像力が足りていないことにあります。
想像力は、意識すれば鍛えられる
「自分には想像力がない」と思っている人でも、安心してください。
想像力は才能ではなく、習慣です。
まず試してほしいのは、「この人は今、どんな1日を送っているだろう?」と考える癖をつけることです。
打ち合わせの前に、相手が今どんな状況に置かれているかを少し考えてみる。
メールを送る前に、受け取った相手がどう読むかを一度想像してみる。
それだけで、コミュニケーションの精度はぐっと上がります。
まとめ:言葉より先に、想像を
「お客様の立場で」「従業員のことを思って」という言葉は、大事です。
でも、その言葉の前に想像が必要です。
想像のない親切は、押しつけになる。
想像のある関わりが、信頼になる。
「顧客のために」から「顧客の立場で」へ。
その一歩を踏み出すのに必要なのは、特別なスキルではなく、
相手のことを、ちゃんと想像しようとする意志です。
それが、ビジネスの、そして組織の、根っこにあるものだと思います。

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