「昨日と言ってることが違う」
No.2として働く人が、最も消耗する場面のひとつです。
先週「あの方向で進めよう」と言っていた社長が、今日は全然違うことを言い出す。会議が終わった直後に「やっぱりこうしよう」と覆される。出張から帰ってきた社長が「向こうで聞いたんだけど」と新しいアイデアを持ち込んでくる。
現場は混乱し、部下はついていけず、No.2はその間で疲弊する。でも、これは「社長がおかしい」のではなく、多くの中小企業オーナーに共通した特性です。そして、No.2にはこれを上手く受け取る技術があります。
なぜ社長は「思いつき」で動くのか
中小企業の社長、特にオーナー経営者は、「感度が高い」人が多い。外部の情報に敏感で、新しいものに反応し、思ったことをすぐに言葉にする。それが事業を作ってきた推進力でもあります。
問題は、そのアイデアが「指示」として降りてくることです。社長は「面白いと思った」だけかもしれないのに、No.2には「やれということ」として届く。この「社長が言ったこと=指示」の自動変換が、現場の混乱を生みます。
「思いつき指示」には3つのタイプがある
タイプ①:本気の方針転換——社長が真剣に考えた結果、方向を変えようとしている。従来の計画を見直す必要があります。
タイプ②:アイデアの共有——「こんなのどう思う?」という感覚で話している。社長自身、まだ確信がない段階です。
タイプ③:感情的な反応——何かに触れて「これいいな」と思った瞬間の発言。時間が経つと忘れていることも多い。
No.2の最初の仕事は、「これはどのタイプか」を見極めることです。
タイプ別の受け取り方
タイプ①の場合:背景を確認する
「この方向に変える理由を教えていただけますか?現場への影響も含めて整理したいので」
理由を聞くことで、社長の思考が整理されることもあります。「言われてみれば、まだ考え途中だな」と社長自身が気づくこともある。
タイプ②の場合:問いを返す
「面白いと思います。これを進めるとしたら、何を優先しますか?現在進めている〇〇との関係はどうなりますか?」
社長に考えさせる問いを置くことで、「まだ思いつきレベル」なのか「本当にやりたいこと」なのかが見えてきます。
タイプ③の場合:いったん受け取って置く
「なるほど、面白い視点ですね。少し情報を集めてみます」
時間が経ってから社長がまた言及するようなら本気度が高い。言及しなければ自然消滅します。
「今の優先順位」を常に確認する習慣
思いつき指示への最大の対策は、「今、何が優先事項か」を社長と定期的に確認しておくことです。週に一度、または月に一度、「現在進めていることの優先順位の確認」をする場を作る。これを習慣にすると、思いつき指示が来たときに「あの優先順位との関係でいうと、これはどう位置づけますか?」と聞ける。社長自身が考える材料になります。
「ノー」と言わずにブレーキをかける
思いつき指示に対して正面から断るのは得策ではありません。代わりに使えるのが、「条件を確認する」アプローチです。
「これを進めるとしたら、現在の〇〇と人員が重なります。どちらを優先しますか?」
「このスケジュールで動くと、△△の納期に影響が出ます。それでも進めますか?」
判断を社長に返すことで、社長自身が「それなら後でいいか」と結論を出すことがあります。
振り回されることと、柔軟に動くことは違う
No.2の役割は、思いつきをすべて実行することでも、すべて止めることでもありません。「何が本気で、何が気分か」を見極め、本気のものを確実に実行に移す——この選球眼が、思いつき指示への最も健全な向き合い方です。

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