社長は未来を見る、No.2は現在を守る——時間軸の違いが役割の違い

「また社長が新しいことを言い出した」

そうため息をついたことはありませんか?

現場が今の仕事で手いっぱいのとき、社長は「新しい事業をやりたい」と言う。数字が苦しいときに、「大きな投資をしよう」と言う。まだ前の指示が終わっていないのに、「次はこうしよう」と言う。

「なぜ今の状況が見えていないのか」と、No.2は感じます。

でも、これは「社長が現実を見ていない」のではないかもしれません。社長は社長なりに、正しいものを見ているのかもしれない。ただ、見ている時間軸が違うのです。


社長は「未来」を見る生き物

中小企業のオーナー経営者は、「今より先」を見続けることで会社を作ってきた人たちです。今の問題より、3年後の可能性。今の制約より、未来の理想の姿。「これをやったらどうなるか」という問いが、常に頭の中を動いている。

だから、新しい情報に敏感で、変化にすぐ反応し、「面白そうなこと」に飛びつく。それは欠点ではなく、事業を動かしてきた推進力そのものです。会社を作り、成長させてきた社長の多くは、「未来を先に生きる」ことで道を切り開いてきた。そういう人が社長になる、とも言えます。


No.2は「現在」を守る生き物

一方、No.2の仕事は何でしょうか。今の現場が回っているか。今のチームが動いているか。今の数字が計画通りか。今の顧客との関係は大丈夫か。今の問題に、手が打たれているか。

No.2は「今、ここ」を見る役割です。社長が未来を見ている間、現在という地盤を固める。社長が先に進もうとするとき、足元が崩れていないかを確認する。

これは「保守的」ということではありません。組織が前に進むためには、現在という土台が必要です。その土台を作り、維持するのがNo.2の本質的な仕事です。


摩擦は「役割の違い」から生まれる

社長とNo.2の間に起きる摩擦の多くは、この時間軸の違いから来ています。社長から見ると、No.2は「後ろ向き」「慎重すぎる」に見えることがあります。No.2から見ると、社長は「現実が見えていない」「無責任」に見えることがある。

でも、これは性格の問題でも、どちらが正しいかの問題でもありません。それぞれが、見るべきものを見ているのです。


「摩擦」は組織の健全性のサインでもある

社長が未来を見て、No.2が現在を守る——この緊張関係は、組織にとって必要なものです。社長しかいない組織は、未来には向かうが、今が壊れていく。No.2しかいない組織は、今は安定するが、未来に向かえない。

社長の「やりたい」とNo.2の「できるか」がぶつかることで、現実的な前進が生まれます。摩擦がゼロの組織は、どちらかが黙っている組織です。


No.2が消耗しないために

この構造を理解すると、消耗の仕方が変わります。「また社長が現実を見ていない」ではなく、「社長は未来を見ている。では現在側から何を届けるか」という問いに変わります。

社長の「やりたい」を否定するのではなく、「今の状態でそれをやるには、何が必要か」を届ける。未来への橋を、現在側から架ける——それがNo.2の仕事です。

社長の時間軸と自分の時間軸が違うのは、問題ではありません。その違いが、二人で組む意味です。


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