固定費と変動費の分け方——損益分岐点を自分で計算する

会計・財務のしくみ

「何本売れば黒字になるのか、正直わからない」

そう言う経営者は少なくありません。感覚でなんとなくやってきた、という方も多いです。

でも、これは計算で出せる数字です。そのための道具が「損益分岐点」です。


費用を2つに分ける

損益分岐点を理解するには、まず会社のコストを2種類に分けることから始めます。

固定費:売上に関係なく発生するコスト

  • 家賃・リース料
  • 正社員の給与・社会保険料
  • 減価償却費
  • 借入の返済(元本)

売上がゼロでも出ていく費用です。「固定」という名の通り、売上の増減に関わらず毎月一定額かかります。

変動費:売上に連動して増減するコスト

  • 商品の仕入れ原価
  • 材料費・外注費
  • 売上に応じた歩合給
  • 配送費(出荷数に連動する場合)

売れれば増え、売れなければ減る費用です。


具体例で計算してみる

あるサービス業の会社を例に、順番に計算してみます。

  • 月の固定費:200万円(家賃30万・人件費150万・その他20万)
  • 変動費:売上の30%(外注費や消耗品など)

ステップ1:売上100円のうち、固定費に回せる金額を出す

売上100円に対して変動費が30円かかるとしたら、残りの70円が固定費の回収と利益に使えます。

この「売上から変動費を引いた残り」を限界利益、それが売上に占める割合を限界利益率と呼びます。簡単に言うと、「1円売るごとに、会社に残る金額の割合」です。

限界利益率 = 1 − 変動費率

= 1 − 0.3

 

= 0.7(70%)

ステップ2:固定費を「限界利益率」で割る

固定費200万円を回収するには、売上がいくら必要か。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率

= 200万円 ÷ 0.7

 

≒ 286万円

月286万円を超えれば黒字、下回れば赤字です。

「月300万売れれば余裕」なのか「500万売らないと苦しい」なのか——この数字を知っているかどうかで、経営判断の精度がまったく変わります。


自社で計算するときのポイント

変動費と固定費の分類に迷ったら

「売上がゼロになったとき、この費用はなくなるか?」と問いかけてみてください。

  • なくなる → 変動費
  • 残る → 固定費

パート・アルバイトの人件費は判断が難しいですが、シフトを完全に止められるなら変動費寄り、最低限の出勤が必要なら固定費寄りと考えるといいでしょう。

試算表のどこを見るか

税理士から受け取る試算表の「販売費及び一般管理費」の内訳を見ながら、一項目ずつ「固定か変動か」に振り分けていきます。最初は大まかで構いません。精緻さより、まず全体像をつかむことが先です。


損益分岐点を使った経営判断

損益分岐点がわかると、こんな問いに答えられるようになります。

「新しくスタッフを1人採用すると、売上がいくら必要になるか?」

固定費が30万円増えるとすると:

必要な追加売上 = 30万円 ÷ 限界利益率(0.7)≒ 43万円

月43万円以上の売上増が見込めるなら採用は合理的、という判断ができます。

「値引きしても受注すべきか?」

値引きによって変動費率が変わるので、限界利益率が下がります。その分、損益分岐点が上がります。「この値引きは何件の追加受注で元が取れるか」が計算できます。


まとめ

  • 費用は「固定費(売上に関係なく発生)」と「変動費(売上に連動)」に分けられる
  • 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
  • この数字を知っていると、採用・値引き・投資の判断に根拠が生まれる
  • 最初は大まかな分類でOK。精度より「自分で計算できる」ことが大事

感覚でなく数字で経営を判断する——その第一歩が、固定費と変動費を分けることです。

まずは今月の試算表を開いて、費用を2つに振り分けてみてください。

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