「先月、売上が上がったんですよ。でも、なんか手元にお金が残った感じがしなくて」
そんな話をする経営者は、思った以上に多いです。
売上は伸びているのに、なぜかしんどい。そのモヤモヤの正体は、たいていの場合「粗利率」にあります。
売上より粗利率を見る
売上は大事な指標です。でも、売上だけを追いかけていると、経営の実態を見誤ります。
たとえば、こんなケースを考えてみてください。
- A社:売上1,000万円、原価800万円 → 粗利200万円(粗利率20%)
- B社:売上600万円、原価200万円 → 粗利400万円(粗利率67%)
売上はA社の方が大きい。でも手元に残るお金は、B社がA社の2倍です。
粗利(売上総利益)= 売上 − 原価
粗利率 = 粗利 ÷ 売上 × 100
この粗利から、人件費・家賃・広告費などの「固定費」を払います。
粗利が固定費を上回ってはじめて、利益が出る構造になっています。
売上を追いかけるより、「粗利率を守る・上げる」を意識した方が、経営は安定します。
業種別の粗利率の目安
粗利率は業種によって大きく異なります。自社の粗利率が「高いのか低いのか」を判断するために、まず業種の相場感を知っておくことが大事です。
| 業種 | 粗利率の目安 |
|---|---|
| 小売業(一般) | 25〜35% |
| 飲食業 | 60〜70% |
| 製造業 | 20〜30% |
| IT・システム開発 | 40〜60% |
| コンサルティング・士業 | 70〜90% |
| 美容室・サロン | 50〜70% |
| 建設・工事業 | 20〜30% |
「うちは同業より低い」と気づいたとき、それが改善のスタートラインです。
粗利率が下がる3つの原因
粗利率が低い、または落ちてきているとしたら、原因はだいたい3つです。
① 値引きが常態化している
「なんとなく値引きして受注してきた」が積み重なると、粗利率はじわじわと下がります。
値引きは売上が減るだけでなく、粗利率そのものを傷つけます。
1割値引きして、その分を売上でカバーするには、同じ粗利率なら1割以上多く売らなければなりません。値引きは思っている以上にコストが高い行為です。
② 原価(仕入れ・外注費)が上がっている
材料費・外注費・物流コストが上がっているのに、販売価格を据え置いているケースです。
価格転嫁を「お客さんに悪い」と躊躇する経営者は多いですが、原価上昇を自社で吸収し続けると、やがて限界が来ます。
③ 低粗利の仕事が増えている
売上は伸びているのに粗利が増えない場合、粗利率の低い仕事の比率が上がっている可能性があります。
「忙しいのに儲からない」はここが原因であることがほとんどです。
粗利率を改善する3つの打ち手
① 商品・サービスの価格を見直す
粗利率を上げる一番の近道は値上げです。
「そんな簡単に言うな」と思われるかもしれませんが、原価が上がっているなら、それは値上げの正当な理由になります。
まずは新規顧客への提示価格から変えてみる。既存顧客には理由をきちんと説明する。それだけでも粗利率は変わります。
② 原価を下げる
仕入れ先の見直し、発注ロットの変更、外注から内製化(または内製から外注化)など、原価を下げる方法は複数あります。
ただし、品質や取引関係とのトレードオフもあるので、慎重に検討することが大事です。
③ 粗利率の高い仕事を増やす
全仕事の粗利率を並べてみると、高いものと低いものがはっきり見えてきます。
低粗利の仕事を断る勇気、または高粗利の仕事に注力する方向転換——これが「絞る経営」の入り口でもあります。
まず自社の粗利率を出してみる
難しいことは必要ありません。直近3ヶ月の試算表を税理士から取り寄せて、こう計算するだけです。
粗利率 = 売上総利益 ÷ 売上高 × 100
試算表には「売上総利益」という行があるはずです。それを売上で割る。それだけです。
その数字が業種平均より低ければ、改善の余地があります。
去年と比べて下がっていれば、何かが起きているサインです。
売上の大小より、粗利率の高低の方が、会社の体力を正直に教えてくれます。
「今月の売上どうだった?」より、「今月の粗利率どうだった?」を問いにする習慣が、経営者の財務感覚を育てます。
まとめ
- 粗利 = 売上 − 原価。ここから固定費を払って利益が出る
- 売上が大きくても粗利率が低ければ、手元にお金は残らない
- 業種別の平均と比べて、自社の粗利率を把握することが第一歩
- 粗利率が低い原因は「値引き」「原価上昇」「低粗利の仕事の増加」
- 改善策は「値上げ」「原価削減」「高粗利の仕事へのシフト」
まずは今月の試算表を開いて、粗利率を計算してみてください。
その数字が、経営の「今」を教えてくれます。


コメント